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舞台「ライチ☆光クラブ」を観て、ずっとあの廃墟の秘密基地のことを考えてる(2013/12/21・13:30~・AiiA Theater Tokyo)

stage

21日はAiiA Theater Tokyoで舞台「ライチ☆光クラブ」を観てきた。
原作は古屋兎丸のコミック『ライチ☆光クラブ』。でもこのコミックにも更に原作があって、それは1980年代に活動していたアングラ劇団・東京グランギニョルの「ライチ光クラブ」という舞台。古屋さんが高校生の頃に東京グランギニョルの「ライチ光クラブ」を観て感銘を受け、大人になってからあの舞台をマンガ化したい!と当時の資料を集めて描いたそう。

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

タイトルは以前から知ってたんだけど、表紙がなんかすでに禍々しいし、内容もスプラッターなグロい描写が盛りだくさん、と聞いていたので、いまいちコミックの方に手を出す勇気が出なかった。でも、舞台にテニミュきっかけで知って気になってた役者さんが数人出演してたので、よし、じゃあ行ってみよう!と思って観に行った。

で、観終わって1日経って、もうずっとあの廃墟の秘密基地のことを考え続けている。
思わず書店に走って前日譚の『ぼくらのひかりクラブ』上下巻とも購入してしまって、繰り返し繰り返し読んでる。
ものすごい作品に出会ってしまった、と思った。観に行って本当に良かった。

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物語の舞台は蛍光町という工業地帯。街には工場から出る黒い煙が24時間立ち込めていて、光もなく薄暗い。町の片隅にある秘密基地「光クラブ」で、9人の少年たちは「少年の姿のまま世界を統治する」という崇高な目的のために機械を作っていた。やがて完成した機械は「ライチ」と名付けられ、目的達成のためにひとりの美少女・カノンと数人の少女たちを誘拐してくる。秘密基地の帝王・ゼラはカノンを利用して目的達成へと歩を進めようとするが、徐々に一連の行動に疑問を感じ始めた光クラブの一員・タミヤと対立するようになる。更にゼラと親密な仲にあったジャイボの罠によってゼラは疑心暗鬼に陥り、少年たちの均衡は次第に崩れていく。

―――というのがおおまかなあらすじ。ピーターパンシンドロームというか厨二病というか、「大人になりたくない」という気持ちが強すぎた少年の起こした取り返しのつかないグランギニョル(残酷劇)。とにかくひたすら不条理に人が死ぬ、死ぬ、死ぬ(しかも死に方がどれもえげつない)。確かにこれをマンガで描くと相当グロテスクだろうな~。(実際、興味本位でコミックの中身の画像をググってたら、ちょっとウッとなった…人間のぞ、臓物が…)東京グランギニョルの「ライチ~」画像もいくつかインターネットに落ちてるけど、色々結構リアルでグロい。それに比べると現代の「ライチ~」はずいぶんマイルド。まぁ制作がネルケプランニングですしね。
脚本は毛皮族江本純子さん。随所にギャグも散りばめられていて、客席から笑いが起こるシーンも結構ある。それがシュールっていうか、まさに「喜劇と悲劇は紙一重」って感じで良いなって思った。

前方の席の人に汚れないようにビニールが配られてるくらい血糊がどばーっと飛び散る舞台なんだけど、その血糊も気持ち悪いっていうよりは「あっぱれ!」みたいな気持ちのほうが勝ってしまう。四方八方、ステージの色んなところから色んな角度で血が飛び散る。時には役者がボンベを背負って自らのタイミングで血を飛ばす。どれくらい血が吹き出したか分かるように、他のキャラが死ぬキャラの横に立って、学ランのボタンを開けて白いシャツで血を受ける。真っ赤な海の中で溺れるように死んでいくキャストの、事切れる直前の芝居はそれぞれに鬼気迫るものがあって、思わず歌舞伎の大向うみたいな掛け声をかけたくなる。拍手したくなる。上手く言えないけど、エンターテイメントだな、って思った。

それから、なんといっても良かったのが登場人物それぞれのキャラクター。原作のキャラクターも全員みんな個性的で可愛くて愛しいし、それを演じるキャストが本当に全員ハマり役だった。キャラクターの感情と、役者の内部から発せられるものとが寸分の狂いもなく噛み合ってる感じ。だから、急ぎ足で展開していくストーリーも違和感無く飲み込める。こういう原作付きの舞台って、原作知らないと大抵「えっ今のどういうこと?」ってなる部分がひとつはあると思うんだけど、「ライチ~」にはそれがなかった。ストーリーもキャラクターの名前も性格も、何一つ知らない状態で観たのにね。これってとてもすごいことだと思う。

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ここから先は、ガッツリ本編のネタバレ。
舞台と『ぼくらのひかりクラブ』上下巻だけを摂取した状態で、今の気持ちをメモしておきます。

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いちばんぐっと来たのは、ライチとカノンが夜の光クラブでダンスをするシーンだった。心を持たないはずの機械と囚われの美少女の恋愛は、まるで少女マンガのワンシーンみたいにロマンチックだった。
「ライチは私と踊ってる時だけ人間になれるんだよ」
カノン役の佐津川愛美ちゃんの、鈴のような声がとても清楚で可愛い。ライチ役のオレノグラフィティさんもとても素敵だった。カノンを見つめる眼差しは、機械だけど優しさと暖かさを孕んでいてキュンとする。例えばこれから先、舞台「ライチ☆光クラブ」が何年も何百年も続く舞台になって、テクノロジーがどんなに発達しても、ライチは人間が演じないと駄目だなと思った。

そういえば、今書きながら気付いたんだけど、カノンのダンスシーンって二箇所あって、ひとつはこのライチとのシーン、もうひとつは最後に片腕をもがれたゼラに無理やり踊らされるシーンなんだけど、このふたつってすごく対照的だ。人間の心を持ち始めた機械であるライチと、完璧な機械になりたかった人間のゼラ。死体だらけの光クラブで、声高に叫ぶ「なんというグランギニョルだ!」っていうセリフが、虚しくも美しかった。人間は永遠に少年のままでなんていられない。

ライチとカノンといえば、タミヤとニコと4人で光クラブを脱出しようとするシーンも良かった。まるでそこだけ少年漫画のような真っ直ぐな希望があった。中尾明慶くんの演じるタミヤは、原作のタミヤよりもずいぶんヤンチャでガキ大将っぽい印象を受けたけど、これはこれで良いタミヤだ、と思った。そして、良かったシーン…と考えてまずこういうところばかり思い浮かぶ自分はやっぱりメジャーなエンタメを摂取したい人間なんだなぁと思った(笑)


アングラな方面でまず思い浮かぶシーンは、廣瀬大介くん演じるカネダがライチに殺されるシーンだ。目をうつろに開いたまま、真っ赤な唇の端から血を一筋流して息絶えたカネダが美しかった。廣瀬大介という人は、だらんとぶらさがった腕の、指の先まで美しい生き物だなぁ…と感心してしまった。

それから、やっぱりなんといってもジャイボを演じた玉城裕規さんが、もうズルかった。見た目も演技も全てがズルかった。完全にジャイボだった。あの妖艶さ、背徳感、甘ったるい果実の汁みたいにベタベタした淫靡な喋り方! すごい役者さんがいたもんだ、と思った。ダミ声っぽい特徴的な声をされてるのだけど、それが逆に変声期の男の子の声みたいで良かった。あの声で切なげに言う「声変わりも始まったし、ヒゲもうっすら生えてきたし」みたいな台詞の迫力たるや。


佐藤永典くんは1st四天Aの過去映像を色々見て知っていて、でもテニミュに出てた頃はまだ右も左も分からない男の子って感じだったのに、もう立派な役者さんで見事だった。オカマの役があんなに板につくなんて、という感動もあり、ギャグパートの台詞の言い回しとか間の取り方とかも良くて、しっかり舞台人って感じがした。テニミュで推しの俳優見つけると、こういう面白さがあるんだな~と改めて思った。


わたしはこの日、客席の中列よりちょっと後ろくらいの位置から見てたんだけど。
最後、カノンの背中越しに見た、すべてが終わった光クラブで雨に打たれながら立つ9人の血だらけの少年たちと命を持った機械のことが忘れられない。

「さよなら、光クラブ」

できればまたどこかで、



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舞台ライチ☆光クラブ [DVD]

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初演の舞台のDVDめっちゃ欲しくなってきた…。

ぼくらの☆ひかりクラブ 上[小学生篇]

ぼくらの☆ひかりクラブ 上[小学生篇]

ぼくひか読んで、ニコとタミヤのすれ違いっぷりにやられた。