光の通い路

はじめは、天井から降り注ぐまぶしい光が彼の大きな瞳に反射してきらきらしているだけなのかと思っていた。
でも、曲が進むにつれ、彼の瞳のきらきらはどんどん増していき、ああ、これって「きらきら」じゃなくて「うるうる」じゃん、と思った瞬間に、ステージの上の彼は素早く手の甲で目元をぬぐった。
ちょっと恥ずかしそうに笑いながら、出来るだけお客さんに見られないようにという配慮なのか、顔を後ろに向ける振り付けにあわせて涙をぬぐう姿が、彼らしいなぁと思った。

ミュージカル「テニスの王子様」全国大会青学VS立海、仙台公演千秋楽での、黒羽麻璃央くんのお話です。

思わず泣いてしまったアンコール曲だけじゃなく、この日のまりおは全体的にものすごく気合いが入っていたように思います。ダブルス1の試合の時、ソロパートでの表情がいつもの何倍も豊かで、何というかとても「噛みしめている」顔だった。まだ地方公演も、凱旋も残っているのに、もうそんなに!?って一瞬びっくりしたんだけど、理由はすぐにわかった。仙台はまりおの出身地だからだ。

ただの推測でしかないんだけど、まりおにとってテニミュに出演していたこの2年間は、やっぱり特別なものだったんじゃないかなぁ。
演劇が、舞台がそんなにメジャーなものではない日本で、毎回毎回全国公演ができるシリーズものの舞台が、他にいくつあるだろう。よく、俳優さんがインタビューで「全国放送のドラマに初めて出演したとき、田舎のおばあちゃんにも活躍を見てもらえるのが嬉しかった」というようなことを言ってるのを目にするけど、まりおはこの2年間で4回も地元の家族や友人に自分の活躍を直接見てもらえる機会を得ていたんだよね。
まだまだ若手に分類される俳優が、そんな風に地元に錦を飾れる確率って、そんなに多くないと思う。やっぱりテニミュってバケモノみたいなスケールの舞台だなぁと思うと同時に、まりお、良かったねって思うのです。

そして、私もテニミュのおかげで初めて仙台に行くことができました。
四天宝寺の時も行って、その時はバスに乗って市内を観光したんだけど、今回はちょっと足をのばして松島まで行ってみた。気温は暑いんだけど空気がカラっとしていて気持ちよくて、タクシーのおじちゃんも東北なまりで優しくて、なんだかとっても癒された。
常日頃からまりおが「仙台は良いところ!」ってブログやトークイベントで言ってる、その良さを自分の体で感じられたのが良かったなって思います。いや、ぶっちゃけまりおっていうか流司くん目当てで行ったんだけど、すみません。笑

まりおが今回泣いちゃったのは、今回の公演が「最後」だからだろうなって思います。大阪公演では大阪出身のキャストがうるうるしていたようだし、やっぱり地方から出てきた子たちは皆地方公演にかける想いがあったんだろう。

テニミュ2ndシーズンが終わったら、テニミュを卒業したら、彼らはどこに行くんだろう、って、最近ぼんやり考えています。12月1月あたりの、「テニミュの次のお仕事」が決まる子もぽつぽつと出てきて、テニミュで彼らを知った私からすると、なんだか不思議な感じ。

でも、彼らの長い長い人生からすると、テニミュに出演していたこの数年間は、きっと長い長い線の上のほんの一点に過ぎないんだろうなぁって思います。

この間、Twitterでこんなことを呟いたんだけど、

この二人だって、今はこれだけ信頼しあってて仲良しだけど、違うところから来て、違うところに行くんだよね。二人の人生の長い線が、「テニミュ」っていう点でぶつかって、交差して、そしてまた離れていく。そのほんの一瞬を、私は今見てるんだ。見ることができてるんだ。そういう風に考えると、ぶわーって鳥肌が立つ。凄いなぁ。人間の出会いって本当に凄い。

寂しいけど、テニミュは有限の箱庭だから楽しい。
いつか皆ここを巣立っていく。そしてもっともっと大きい存在になる。
「若手俳優の登竜門」って呼ばれることもあって、その呼び方正直どうなのよ、と思う時もあるんだけど、その言葉が含んでるニュアンスは凄く分かるんだよなぁ。学校みたいなんだよね。いくつになっても体験できる青春なんだよ。たくさんの人たちの中から選ばれて、集められて、仲良くなって、時にはケンカしてぶつかって、また仲良くなって。夜遅くまで残ってレッスンしたり、地方のホテルではしゃいだり、ステージ以外のところでもたぶんたくさんの思い出が生まれてる。

その思い出を、皆がずっと大切に胸の中にしまっておいてくれたらいいなぁ。
色んなところに散らばって、その先々で大きく成長した彼らが、時々ふと当時を思い出して、胸の中の思い出をそっとなぞって、「あの時は楽しかったなぁ。だから今があるんだな」って、思ってくれるといいなぁ。

ただのオタクのエゴだけど、そういう風に思います。

お前の道はお前が決めろ 俺の道は俺が決める
一緒に歩くのも自由 離れて行くのも自由
旅立つ者 飛び立つ者 とどまる者
俺たちは 次のステップを模索するため
チリヂリになり 仲間の地図が少し広がる

今回の公演で使われてる「GRADUATION」って曲の、このフレーズが本当に好き。

公演も、あと半分だ。