ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン 青学VS立海 東京公演の雑感

2ndシーズン最後のテニミュ、東京公演が終わってしまった。
私が行ったのは7/12昼、7/12夜、7/13昼、7/20昼、7/20夜、7/21昼の計6回。次の大阪公演までは10日間空きますし、私が次に観れるのは7/23の仙台公演だと思うので、ここらで一度感じたことを整理しておきます。

(ガッツリネタバレしますのでお気をつけて!)



全国氷帝四天宝寺、と観てきて、私的に今回の立海公演がいちばん初見ではわかりづらい公演でした。理由はいくつかあると思うんだけど、一番大きな理由はバランスの悪さかなぁと思う。ぶっちゃけて言うと、南次郎とリョーマのシーンはもっと短くていいと思うし、シングルス3は演出次第でもっと盛り上げることができると思うんだよなぁ…具体的にどこがどう駄目というのはちょっと分からないんですけど。

でも、南次郎とリョーマのシーンをあれだけ長いことやるのにもたぶん理由があると思うんです。その理由っていうのが、この公演が基本的にずっと「記憶喪失になったリョーマが記憶を取り戻し天衣無縫にたどり着く物語」と「再び青学の時代を作り上げたい青春学園VS三連覇を成し遂げたい立海大付属の戦いの物語」の二本が平行線を辿って進んでいくから。これまで私が見てきた全国氷帝四天宝寺も、個々のこまかいエピソードはたくさんあるにせよ、大枠は「青春学園VSリベンジを果たしたい氷帝(または優勝を狙う四天宝寺)の戦いの物語」という一本道だけだったから。そしてそれを観て、私はテニミュの良さはそのストーリーの単純さにある!と思ったのですよ。

参考:
わたしが思う「ミュージカルテニスの王子様」の面白さ7選 - 箱庭

でも、今回のテニミュは一味違う。「越前リョーマ個人の物語」が入ってる。そして、その物語がまた、原作とはかけ離れた大きな2つのことを想起させる要素を持っているんですよね…。具体的にどういうことかというと、以下の通りです。

記憶喪失→天衣無縫の流れが連想させる「生と死」

まず、一番驚いたし、ちょっと恐怖すら感じたのがこの演出です。この公演のモチーフのひとつは、間違いなく「生と死」。一度死んだ者が生き返るということ。
リョーマは全国大会決勝の前の父親との特訓中、不慮の事故で川に落ちこれまでの記憶を全て失ってしまいます。つまり、これまで「テニスの王子様」として存在していたリョーマはここで一度死んだ。この時の演出がまたヤバくて、川に落ちたあと、まだヒトになる前のリョーマ(人形です)がお母さんのおなかの中にいるっていう演出があるんですよ…。輪廻転生じゃないけど、死ぬこと≒生まれる前、みたいな?循環している。

また、死を連想させる機会はもう一つあります。リョーマが幸村くんから五感を奪われて、目も耳も触覚も機能しなくなったとき。ステージ上は真っ暗で、中央にリョーマが一人。「♪まるで暗闇 何も見えない」から始まる歌を歌うのですが、暗闇=無=死。仲間の助けによって生き返りかけていた(≒記憶を取り戻しかけていた)リョーマが、再びここで殺される。それを助けてくれるのが天才テニスプレイヤーの実父であり、この辺の「絶対に超えられないけどいつかは超えたい偉大な父」って存在は非常に週刊少年ジャンプ的だなと思います。笑

そんなこんなで、二度死んだリョーマくんですが、無事に命を取り戻し、天衣無縫の極みへ。越前リョーマ爆誕の瞬間。他の登場人物たちがこの時リョーマに向かって歌う曲は、なんか讃美歌っぽくすらあります。

ここで面白いのが、原作にはこの「生と死」ってテーマは描かれていないんですよね。もしかしたらそういう意図があったのかもしれないけど、ここまで露骨に描かれてない。「生と死」というテーマは古今東西色んな脚本に描かれていると思うんですけど、なんか非常に「演劇的」なんですよね。「テニミュの良さは原作の再現度が高いところだ」って前にテニミュを作っている側の人が言ってたんですが、最後の最後に舞台の文脈めっちゃ入れてきたやん!?と驚きました。それがいいとか悪いとかではなく、ね。

リョーマのソロバラードから感じる「小越勇輝の物語」

さて、そして次に考えるのが「最後のリョーマソロバラードはリョーマの曲なのか、それとも中の人(小越くん)の曲なのか」ということ。
後日譚として、アメリカに旅立つリョーマがふと思い出したように後ろを振り返り、歌い始めるバラード。
あの日見ていた感動が いまここにある
という歌詞から始まるこの曲ですが、聞けば聞くほど「あの日」というのは小越くんが観た1stシーズンの全国立海公演なんだろうなということがわかります。そしてサビの、
ありがとう 笑ってくれて
ありがとう 叱ってくれて
ありがとう 支えてくれて
ありがとう 愛してくれて

というフレーズ。もちろん、「越前リョーマ」というキャラクターが、これまで関わってきたキャラクターやお客さんに向けて歌っている、という意味もあるんでしょうけど、これも小越くんから他のキャスト、スタッフ、そしてお客さんへのメッセージだというようにも取れる。

2ndの大きな特徴の一つが「キャスト変更が少ない」という点でした。出番の多いリョーマ以外の青学と、例外の跡部様を除けば、4年間という長い間、1人の人間が1つの役と向き合ってきた。それゆえ、2ndはキャラクターとキャストを同一視して見やすかったと思います。春、リョーマがテニス部に入部してから、8月の大会で優勝するまでの5か月間の物語を、おごたんは16歳から20歳までの4年間かけて演じた。もちろん、おごたん以外のキャストだって特別です。が、やっぱり2ndは、おごたんを主人公に据えたプロジェクトだったんだなぁって思います。


リョーマ(主人公)を軸として進んでいく物語が原作に沿ってない(原作にミュージカルオリジナル要素をぶち込みすぎている)って、よく考えてみたらとても奇妙な現象ですね。それだけ、おごたんは「ミュージカルテニスの王子様2ndシーズン」にとって大きな存在だったんだろうな。


……というのが一番語りたかったことで、あとは雑感をちょこちょこ箇条書きにしておきます。


<1幕>
・OP曲、最初は慣れなかったけど何度か聴くとグッとくるスルメ系。ていうか今回の新曲は基本全部スルメ。
しんのすけさんの南次郎より森山さんの南次郎のほうが行儀がいいです。
・「いよいよあいつとの最後の試合か!」男前なまりおの菊丸が好きだ~~~!決意の表情
・♪ウィニングロード、最高のOPすぎる。くるくるキャストが変わるところ、そして短いソロパートで見事にキャラの特性を言い表してるところが良くできたアニメのOPみたいでアガる。自信満々から仁王に首元狙われて「!?」って顔する菊丸が好き
・シングルス3、なぜかしっくりこないのは、なぜだろう…。
・でも♪風林火陰山雷、すごく好きです。ラスサビで真田をとりまく立海レギュラー、かっこいい盆踊りって感じ…(ほめてます)。幸村も何気にベンチで口ずさんでいてときめく…!
・そしてダブルス2はズルすぎますよね、乾と海堂がよぉ…!茫然と立ち尽くす乾に「…ドンマイ、先輩!!!」って声かけるところからスーパー海堂タイム。超かっこいい。そして、怒りに震える海堂を最後の力を振り絞って止める乾の力強い手、瞳を潤ませながら赤也を睨む海堂、舞台の奥で静かに佇む柳、人道に反したことをしまくる赤也をじっと見つめる白石(天使と聖書)……すべてが完璧すぎる!最後、怒りで起き上がれない海堂に、マイク入ってないのに3バルまで聞こえる声で「立て、海堂!!!」って言う桃ちゃんも、たまらん。辛いけど何度も見たい、けど辛い。
・からの最後の立海が強そうすぎて絶望する、最高の1幕ラスト。

<2幕>
・四天日替わり→パーカッションの流れが最高すぎてううう><
・2ndの四天は、広大さん安西くんのダンス、海太のロッキン、碕くんと流司くんのアクロ、杉江くんのブレイキン、とステージ映えする特技を持っている子が多いので、あのパーカッションの間奏は見応えあって最高です。
・♪クローズドアイ、歌詞が直球すぎるし矢田ちゃんが強そうすぎて、私が手塚だったら照れる。
・♪イリュージョン、かっこよいですね!久保田さんの、体の柔らかいところがとても仁王だと思います。
・しかし星花火の「会場にすり鉢状の風が吹いてどうの」って説明が何で一言もないんだ
・ダブルス1も最高ですね…ダブルスって最高ですね!ゴールデンペアの曲、♪誰にも見えない糸のアカペラから始まる演出が(初見向きではなさすぎるけど)あまりにも良い。これが7代目黄金だよな~って何度も思える。
・プラチナの曲もキャッチ―で最高ですね。塩田くんは歌が上手いな…!!
・記憶喪失のリョーマくんが無垢すぎてヤバイ。足を揃えて座る…。

<3幕>
・ライバルズ、裕太と慧くんのやり取りから目が離せなくなってきた。
・ていうか裕太がいい子すぎて本当に…みんなの弟ですね、みん弟ですね…保護したい…。
・♪幸村のテニス2014、V系ソングすぎる件
リョーマが天衣無縫ってからの幸村くんの顔、必死すぎて見てられない…その前の、病気で倒れてからのうめき声も、胸が張り裂けそうになる。幸村くんって得体が知れなくてあんまり好きじゃなかったんだけど、ミュージカルのおかげで好きになった。
・卒業式、菊丸から大石への言葉が男前すぎて泣くんですけど…。まりおの菊丸は、新テニの脱落タイブレークマッチで大石に対してああいうことはしないんだろうな~って思う。という意味で原作の菊丸とは違うのかもしれないけど、でも私はすごく好き。
・次期部長に財前くんがいてくれてすごく嬉しい;;りゅうじくんの話はまた別口でだらだら語れたらと思います。
・財前「帰るで」金ちゃん「えー嫌や!もうちょっといたい!」財前「ほな泊まっていき」金ちゃん「えっ嫌や!待って、光!!」……天才なのか…。
・そのあとの伊武っちの日替わりコメントのクオリティが高すぎて毎回たまりません。桃ちゃんのツッコミもいい味出してる。

・「勝負だ!」から始まる♪THIS IS THE~、本当に本当に素晴らしいアッパーソングですね!とっても尊い…ドリライでは今回出てない他のキャラクターも、全員で歌ってほしいなぁ…。
・♪鎬を削る者達、1stではライバルズとかが歌っていたんだろうか。一部だけ切り取って立海+ライバルズで。いい曲なので全部聴けなくて残念ですが「クオリティはエクセレント!」ってフレーズすごく立海に似合うね。プライド高そうでかっこいい。

・新アンコール曲。「♪軋むテニスシューズの音を覚えていてね」から始まる歌詞が、2ndの終わりを物語っていてとても寂しい。でも、サビの「♪がんばれ 負けるな 必ず勝て」直球の応援ソングでとても最高です。あと振りが簡単すぎてつい手拍子じゃなくて振りコピしちゃう。そしてC&Rは難易度高め。

財前光くんと彼にまつわる色んな人のこと(後編)

よかったらこちらを先にお読みください。
財前光くんと彼にまつわる色んな人のこと(前編) - 箱庭

さて、そんなわけで財前くんの夏はなんとも苦い感じで終わってしまいました。
このあたりの行間がなんていうかとても少女マンガっぽくてですね、ファンの間では財前くんと謙也さんの組み合わせが人気で、まぁ人気の理由も充分わかるわ!って感じなんですけども。
でも、今回のミュージカルでわたしがぐっときたのは、四天宝寺の部長である白石くんと財前くんの関係だったんですね。決してぼーいずらぶ的なアレではなくてですね、もっと単純に、ああ財前くんって白石くんのことこういう風に思ってるんだ、白石くんには財前くんがこういう風に見えてたんだ、っていう話です。この二人の関係なんて今まで考えたこともなかったので、目からウロコでした。

また具体的に書いていきます。

3月1日ソワレの日替わりネタ*1で、財前くんが以下のようなことを言いました。ざっくりとしか覚えてないので、語尾とか言い回しは違うかも知れないですが。

オサム「財前はほんまにツンデレやなぁ」
財前「…俺も好きでこんな性格なんじゃないっすわ。せやけど、前に白石部長が…本人は覚えてへんかも知れへんけど、こんな俺に対して『不協和音でええ』って言ってくれて。謙也さんもなんだかんだで構ってくるし、他の人も何が楽しいのかいつもニコニコニコニコ話しかけてきて…あ、オサムちゃんもやで。そういうの、ほんまうっとおしいけど…一度しか言わんで、ありがとう」

この『不協和音でいい』っていうのは、テニプリOVAアノトキノボクラ」内での白石くんの台詞です。「お笑い第一!」という四天宝寺の空気に馴染めなかったクールな財前くんが、「四天宝寺は個性があるから面白いんだ、お前はそのままでいいんだ」って白石くんから言われるんですね。この時はこういうところまで勉強して日替わりに活かしてくる流司くん凄い!って思っただけだったんですけど、更にこの日の終演後アナウンスが白石くんと財前くんで、以下のような会話をしてくれました。またニュアンスです。

白石「財前、落ち込んどるんか?」
財前「別に…」
白石「財前、耳が大きくなるわけn」
財前「もうそれいいっすわ」
白石「そうか…財前、金ちゃんのこと、よろしく頼むな。お前になら次期部長任せられるわ」
財前「…駄目っすか?」
白石「え?」
財前「ずっと白石部長にいてほしいと思ったら、駄目ですか?」
白石「財前…よし、真面目な話するで。あのな、人間の出会いと別れの数は同じやねん。出会いがあれば別れもある」
財前「…」
白石「…でも、財前から教えてもろた不協和音は、絶対忘れへんで」
財前「部長…」
白石「ほら、耳が大きくなるわけn」
財前「それもういいですから」
白石「そうか。ほんなら、焼肉食いに行くか!」

うう、思い出すだけで泣けてきました…。
この後アナの凄いところは、まず幕間に財前くんが「部長は忘れてるかも知れないけど」って言った不協和音の話を、白石くんも覚えててくれてたってことですよね。財前くんはこの一年半で部長から色んなことを教えてもらったけど、白石くんも財前くんから大事なことを教わっていた。

白石くんは、とても真面目な人です。真面目で面白くないから、他の人がやるような派手なぶっ飛びテニヌはやらない。毎日コツコツ努力して、基本に忠実な無駄のないプレイスタイルをモットーにしている人。それこそが勝つための近道だと信じているから、知らない間に他の部員にもそれを求めてしまっていました。それが、四天宝寺っぽくない雰囲気を孕んでいる財前くんに出会ったことによって、間違いだったって気付くんですよね。このOVA自体とても大好きな話です。

で、次に凄いところが、財前くんが次期部長になることに対して不安を抱いてるってとこです。
何度も言ってるように財前くんは「天才」って呼ばれてて、クールで、何でもそつなくこなす子なんですよ。そんな財前くんが、不安を覚えてる。なんでかなって考えると、白石くんの部長期間の話に行き着きます。
実は白石くんは、2年生の時から先輩を差し置いて部長をやっていたんですね。これは監督であるオサムちゃんの計らいなんですが、なぜかというと「白石くんが一番勝ちに拘っていたから」だそうです(これは『ペアプリ』という公式ファンブックに書かれています)。四天宝寺は大阪の学校らしく、楽しく笑いに溢れた個性を重んじるテニスをしますが、それと同時に「勝ったもん勝ち」というスローガンも掲げています。どんなに楽しい雰囲気でも、「勝ちに拘る」ことを忘れない。それが、2年連続全国大会ベスト4まで進めた強さの理由です。
そういうわけで、財前くんは入部当初から「白石くんが部長の」四天宝寺テニス部しか知らないわけです。しかも2年連続で全国大会準決勝まで進んでいる。白石くんはとてもパーフェクトなお人なので、そんな人のあとに部長をやれって言われたら、どんなにクールな財前くんでも不安になって当たり前です。

でも、白石くん(とオサムちゃん)は、財前くんを次期部長に決めました。
何故かというと、これはわたしの妄想なんですが、財前くんが今回の試合で「悔しさ」を覚えたからなんじゃないかなって思うんです。今まで財前くんは部内で「天才」って呼ばれてチヤホヤされてきました。実際に、これまでの公式戦でも勝ってきたんでしょうね。そんな財前くんが、まだまだ上には上がいることを痛感した。自分の弱さを自覚して「悔しい」と思った。「悔しさ」は、「勝ちへの執着」に繋がります。財前くんは四天宝寺の部長の条件「勝ちに拘る」を手に入れたわけです。今回感じた「悔しさ」を忘れない限り、財前くんはもっともっと上に行けるし、来年の四天宝寺ももっともっと強くなれると思います。

冒頭で白石くんが「落ち込んでるんか?」って訊くのも、財前くんが悔しがってることをわかってのことだと思うし、ほんとこの後アナは計算され尽くしてて凄いです。四天宝寺の部長と次期部長の過去と今と未来が全部詰まってる。
これを、大千秋楽日の前日にやるっていうのがまた、ね…。場内のザワザワが凄かったです(笑)。


で、この3月1日の一週間くらい前からかな、ベンチワークに結構大きな変化がありました。
ダブルス2の「不器用っすから」という曲の時に、財前くんが白石くんの隣に座ってふたりで何か耳打ちしてお話するようになったんですね。二人とも微笑んでいて、何を話しているのかは不明なんですが、この二人の雰囲気がすっごーーーーく良かったんですよ!!!
なんていうのかな、財前くんも白石くんに素直に心を開いているように見えたし、白石くんも財前くんのことを信頼してて可愛がってるっていうか、ちゃんと部長と次期部長の関係性に見えてぐっときたんですよね。

これもわたしの妄想なんですが、このベンチワークは白石くん(とオサムちゃん)が財前くんを次期部長に決めたことの現れだったと思うんです。ロックな音楽が鳴ってる後ろでひめやかに行われる部長継承式…。めっちゃときめきました。青学と氷帝の部長継承式は『新テニスの王子様』内で既に行われているので、ミュージカルは準公式ではありますが、こうやって四天宝寺も部長継承式を執り行ってくれたことが嬉しかったです。


さてさて、というわけで、2nd四天宝寺の財前くんは、白石くんに対して割と素直に「デレ」でした。ダブルス2中の日替わりで「毒舌財前くんがみんなにあだ名を付ける」っていうネタでも、「白石部長は…空気清浄機」とか言うし。毒舌じゃないじゃん!!!もう!!!(萌)
ちなみに謙也さんに対しては「道路交通法違反」(足が速いから)と「親の七光り」(親が医者なので)という遠慮のない感じで(笑)、こういう軽口を遠慮なく言えるのは謙也さんの方だと思うんですけどね。それはそれでときめくんだけどさ。
でも何で、財前くんは白石くんに対してこんなに「デレ」なんだろうな~って思ってたんですよ。
そしたら、財前くんを演じた佐藤流司くんのブログに答えがありました。

詳しくは3月4日の流司くんのブログを読んで欲しいんですけど、他の四天メンバーには「恥ずかしいから」ってメッセージを送ってないのに、白石くん役の安西くんにだけ感謝の言葉を書いてるんですね。
これ読んで、財前くんから白石くんへの気持ちって、そのまんま流司くんから安西くんへの気持ちだったんだなぁって気付いたんです。

白石くんと安西くんは、優しくて真面目なところが似てると思います。
白石くんは財前くんと出会う前に部員に自分と同じようなテニスをすることを求めていたけど、それでも厳しく「絶対こうしろ」とは言わなかった。どっちかと言うと、白石くんが真面目にコツコツやる姿を見て周りの部員が自発的についてくるような、そういう部員からの信頼が厚いタイプの人に見えます。
安西くんも、そんな白石くんと同じだったんだと思います。自分からぐいぐいリーダーシップをとるような人ではないけど、真面目に、真摯にひとりひとりと向き合うことができるような。
流司くんはそういう安西くんの姿をちゃんと見てわかっていて、だから安西くんに信頼を寄せていて、それが財前くんのお芝居にも繋がったんじゃないかなって考えました。

2ndテニミュは、青学以外は基本的に1つの役をずっと同じ俳優さんがやり続けることが特徴です。(青学は主役校で出番も多いからか、座長の小越くん以外のメンバーは途中で代替わりがありました)
何年間もずーっとその役と向き合っていかなきゃいけないということなので、演者さんの負担は計り知れないんですが、そういうやり方をすることで、演者の物語とキャラクターの物語が合致しやすくなったんじゃないかなって思うんです。
流司くんと安西くん以外にも、今回の公演では演者とキャラクターの共通点みたいなものを考える機会がとても多かったです。
これは、四天のメンバーがそういう役作りをするタイプの人が多かったからなのか、それとも全氷の時よりもわたし自身がテニミュに対して一歩踏み込んだところまで見ることが出来るようになったからなのかはわからないですが。うーん、でも、青学の子たちに対しても何人かそういう風に考えたので、やっぱり後者かなぁ。小越くんに至っては本人が自らリョーマと自分の融合みたいなことに言及していたし。この辺は次のFINAL立海でも考えていきたいなって思います。


なんにせよ、四天宝寺公演はわたしにテニミュの新しい楽しみ方を教えてくれた公演でした。
キャラクターの「人生」を想像すること、演者とキャラクターの「物語」を感じ取ること。
やっぱりテニミュって楽しいです。


長々と読んでいただき、ありがとうございました!

*1:今回の公演ではいつも2幕が始まる前に四天宝寺の監督オサムちゃん+四天宝寺の誰かでの日替わりネタがありました

財前光くんと彼にまつわる色んな人のこと(前編)

昨年末に始まったテニミュ四天宝寺公演も、キャストが一人も欠けることなく無事に大千秋楽を迎えました。
わたし個人としては、まず何よりこんなに通うことになるとは予想もしていなかったし(計14回観に行った…2桁は超えないようにしようと思ってたのに…)、テニミュでは初となる遠征もキメたし(仙台、楽しかったです!)色々と新しい扉を開いた2ヶ月半でした。

特に凱旋が始まってからは、キャストが日替わりネタや前/後アナで、こちらの予想をはるかに超えるような部分までそれぞれのキャラクターに肉付けをしていて驚きました。舞台上で演じられている「とある夏の日の全国大会準決勝の1日」だけではなく、そのキャラクターがこれまで13~15年間どんな人生を歩んできたのか、また、これから先どんな人生を歩むのか、までもが見えてくるような芝居をされていて、本当に素晴らしかったと思います。
原作のコミックスで、舞台上で、切り取られている時間は視点は彼らの人生という長い長い線のほんの一点に過ぎないんだというのを改めて感じました。

具体的に例を挙げて説明します。

四天宝寺には財前光くんというキャラクターがいます。中学2年生。今回の舞台では、佐藤流司くんが演じていました。その財前くんなんですが、原作では2~3言しかセリフがなくて、試合にもエントリーされてるんですが色々あって実質ほとんど出ないという、まぁいわばモブに毛が生えたようなキャラクターなわけです。
コミックスでもコマの端っこにいたりいなかったりで、正直原作を読んだだけではコマに描かれていないときの財前くんがどんなことをしていて、何を考えているのかなんて、まったく分からないんですよ。
でも、ミュージカルでは、試合に出てないときも舞台上に設置されたベンチに座って、仲間の試合を応援しないといけません。マンガのコマに描かれていない部分、原作にない部分を演じないといけないんですね。これってとっても大変なことだと思います。テニプリは、ファンブックとかアニメとかゲームとか、色んな方向に展開していて、それをかき集めれば原作以上の情報は得られるわけですけど、それでもキャラの個性を、考えていることを掴むにはまだまだ材料が少ない。あとはもう、役者の想像力が物を言う世界になるんですね。で、流司くんは、その想像力を働かせるのがとっても上手な人でした。

財前くんは中学に入るまでテニスの経験がなかったのに、テニスがとっても上手で「四天宝寺の天才」と呼ばれている、クールでちょっと厨二っぽい性格の男の子です。好きな映画は「アメリ」(←これ草生やしていいポイントだと思う)。嫌いなものは「魚の苦いところ」(可愛い)。で、今回の試合ではダブルス1に、3年生の忍足謙也さんとエントリーされています。
がしかし、本番の試合では謙也さんが同じ3年生の千歳千里くんに自分の出番を譲ってしまうんですね。これは謙也さんの色んな方面への優しさが導いた結果なんですけど、原作を読んだだけではこのとき財前くんがどんな気持ちだったかなんて分からないんですよ。

事前に謙也さんに言われて、オーダー変更があることを知ってたのか。
それとも、謙也さんは財前くんにも変更を内緒にしてたのか。

今回のテニミュでは、財前くんは事前に知らされていなかったという芝居をしていました。
四天宝寺、財前・千歳ペア!」とアナウンスがあったときに、謙也さんの方をバッと振り向いて「何で?」って目で訴え掛けるんですね。謙也さんはそんな財前くんに目を合わせようとしない。勝手にオーダー変更してしまった、気まずさがあったんだと思います。

謙也さんが千歳に出番を譲った理由は、「千歳が自分よりも財前よりもテニスが強かったから」です。
ここまで四天宝寺は対戦相手の青学に一勝二敗。この大会は先に三勝した方が勝ちなので、この試合は絶対に落とせない試合だったんですね。だから謙也さんは少しでも勝率を上げるために千歳を呼び戻し、自分は身を引いた。
しかし厄介なことに、千歳の得意技っていうのがシングルスでしか効力を発揮しないんですね。なので、この試合は結局「変則シングルスマッチ」になってしまいます。青学側は手塚・乾ペアなんですが、乾も下がって、手塚VS千歳の試合になるんです。

千歳の得意技「才気煥発の極み」がシングルスでしか効かないことは、謙也さんも財前くんも分かっていました。謙也さんが身を引くこと=財前くんも試合に出られないということ。これまでふたりで散々練習してきたのに、どちらも試合に出られない。謙也さんに至っては中学生活最後の公式戦なのに、です。これって結構残酷な決断だと思うのですが、財前くんもその条件を飲みます。だって四天宝寺のスローガンは「勝ったもん勝ち」だからです。手塚に勝つためには、千歳を出すしかなかったんです。

しかしそんな謙也さんのお膳立ても虚しく、千歳は手塚に押されてしまいます。この時に「天衣無縫の極みに一番近い男」という曲が入るんですが、この曲のラスサビ「お前は天衣無縫の極みに 一番近い男」という部分は、ステージ上にいる千歳以外の全員が(たぶん千歳も歌ってなかったはず、よく観てないけど笑)敵も味方も関係なく手塚に向けて歌います。四天宝寺の選手ですら認めざるを得ない圧倒的な手塚の強さ。皆が手塚の方を見ています。そこで一人だけ手塚の方を向いていないのが、財前くんなんです。

このことに気付いたとき、鳥肌が立ちました。
財前くんは、ステージ中央の奥の方で、悔しそうに握り締めたラケットを見つめて、最後に少しだけ、ほんとに一瞬だけ手塚を睨むようにして「一番近い男」の部分を歌います。口も小さく動かすだけで。
よく考えたら、悔しくて当たり前ですよね。色んな悔しさが混じっていたと思います。これまで練習してきたであろう謙也さんとのダブルスが出来なかった悔しさ。ダブルスなのにコートにすら立てない悔しさ。そのどちらも、千歳が自分たちよりもテニスが上手いから下した決断なのに、勝つための決断だったのに、その千歳が手塚に負けているという悔しさ。自分がもっと強かったら、テニスが上手かったら。そんな表情をしているように見えました。

この財前くんを見た時に、わたしの中の財前くんが点じゃなくて線になりました。今この瞬間だけじゃなく、財前くんがこれまでテニスを練習してきた過去、この悔しさを通して成長する未来。流司くんが演じる財前くんの「人生」が、ラケットを握り締めた拳に、手塚を睨みつける瞳に、宿っていました。


長くなっちゃったので続きます。